精密和訳 I’ll Try Anything Once – The Strokes

You Only Live Once のデモバージョンを解説します!おそらくこちらのデモバージョンの方がダイレクトな歌詞になっています。Julianのヤングアダルトな部分と、少し大人になった両面が見られる1曲です。(You Only Live Onceの解説記事はこちら

どんな曲?

2006年にリリースされた、アメリカのバンド The Strokes のシングル “Heart In A Cage” に収録されている曲。

You Only Live Once のデモバージョンの曲です。

内容サマリ – こんな内容が歌われます

社会的な成功とは、何か。勉強して、いい大学に入って、結婚して、家を建てて、子供を育てて…。みんな同じに見える。価値観は人それぞれなはずなのに、みんなそれを目指してゲームをクリアしていくみたいに。

  • 人生は決断の連続。そしてみんな、気づかないうちに人生を左右する決断をしている
  • がんばって社会に適合し、成功を目指してゲームをやっているみたい
  • スーツを着て、働いて疲弊して、恋愛して、みんな同じに見える
  • 自分には、そのような社会に適合するのは難しく思えるけど、もう一回がんばってみる

曲はこちら – 聴きながら和訳を読もう

和訳してみた – 日本語訳はこちら

I’ll Try Anything Once – The Strokes
Heart In A Cage (2006)

#1

Ten decisions shape1 your life
人生を分ける10の決断

You’ll be aware of five about
そのうちの5つしか自分では気づかない

Seven ways to go through2 school
7通りの学校の卒業のしかた

Either you’re noticed or left out3
気づいているか、見過ごしているか

Seven ways to get ahead4
7通りの成功の方法

Seven reasons to drop out
7通りの脱落のわけ

注釈 I.

  1. [動] shape: 形作る.
  2. [動] go though: 完遂する,やり遂げる.
  3. [動] leave out: 無視する,忘れ去る.
  4. [動] get ahead: 成功する,出世する.

#2

When I said, “I can see me in your eyes”
「キミの目の中に自分が見えるよ」って言った時

You said, “I can see you in my bed”
キミは「あなたが私のベッドにいるのが見えるよ」って

That’s not just friendship, that’s romance, too
それは友情だけじゃなくて、恋愛でもあった

You like music we can dance to
キミはまるで、ダンスできるような音楽みたい

Sit me down, shut me up
座らせて、黙らせてくれたら

I’ll calm down and I’ll get along with1 you
落ち着いて、キミともうまくやれるよ

注釈 II.

  1. [句] get along (with someone): 仲良くする,気があう.

#3

There is a time when we all fail
失敗するときもある

Some people take it pretty well
上手くさばける人もいる

Some take it all out on1 themselves
自分自身を責める人も

Some, they just take it out on friends
友達のせいにして八つ当たりする人も

Oh, everybody plays the game
みんなゲームをやっているみたい

And if you don’t, you’re called insane2
やらなかったら、頭がおかしいって言われるよ

注釈 III.

  1. [句] take it out on (someone): (人に) 八つ当たりをする,怒りをぶつける.
  2. [形] insane: 頭がおかしい,正気でない.

#4

Don’t, don’t, don’t, don’t, it’s not safe no more
ダメ、もう安全じゃないよ

I’ve got to see you one more time
キミにもう一回会わなくちゃ

That’s when you were born in 1984
それはキミが生まれた1984年

Sit me down, shut me up
座らせて、黙らせてくれたら

I’ll calm down and I’ll get along with1 you
落ち着いて、キミともうまくやれるよ

注釈 IV.

  1. [句] get along (with someone): 仲良くする,気があう.

#5

Everybody was well dressed
みんなきちんとした服を着て

And everybody was a mess1
それでいて、みんなぐちゃぐちゃだった

Six things without fail you must do
失敗できない6つのこと

So that your woman loves just you
彼女に好きでいてもらうために

Oh, all the girls played mental2 games
女の子は頭の中でゲームをしている

And all the guys were dressed the same
男はみんなおんなじ格好をしてた

注釈 V.

  1. [名] mess: 乱雑な様.
  2. [形] mental: 知力の,精神の,頭の中の.

#6

Why not try it all
全部やってみなよ

If you only remember it once?
一度思い出したなら

Ooh, Ooh
ああ

Sit me down, shut me up
座らせて、黙らせてくれたら

I’ll calm down and I’ll get along with1 you
落ち着いて、キミともうまくやれるよ

注釈 VI.

  1. [句] get along (with someone): 仲良くする,気があう.

解釈してみた – 結局どういうこと?

無批判に社会に適合することに対して、違和感を歌った曲かと思います。画一的な規範の中で生活するのはまるで、1984の監視社会じゃないか。

I’ll Try Anything Once とは、「自分はそのような社会の中にいるが、もう一度適合するためにがんばってみよう」という意味かと解釈しました。

  • 人生は決断の連続。そしてみんな、気づかないうちに人生を左右する決断をしている
  • その決断によって、「成功」したり「失敗」したりする。
  • しかし、金儲けが成功なのか?退学が失敗なのか?みんな現状の社会の価値観に従っているだけ。
  • もう一度挑戦してみよう

7 ways to go through school – 人生の決断

#1

Ten decisions shape your life, You’ll be aware of five about.
人生を分ける10の決断 そのうちの5つしか自分では気づかない

Seven ways to go through school, either you’re noticed or left out.
7通りの学校の卒業のしかた 気づいているか、見過ごしているか

Seven ways to get ahead, Seven reasons to drop out.
7通りの成功の方法 7通りの脱落のわけ

  • 人生は自分の決断によって決まっていくが、「あのときのあのことが、今の人生に繋がってるな」と思えることはその半分程度。
    • 本当は、自分が気づいていないだけで、日常の何気ない一つひとつの小さな決断によって今の人生があるかもしれません。
    • それは、良い決断だったかもしれないし、悪いものだったのかもしれない。
  • 学校を卒業することも、決断の一つ。そこには7つほどの方法がある。
    • それはそのまま、(いわゆる世間一般でいう)成功への道。(ゆえに7通り。)
    • 学校に通いきれなかったら、失敗とみなされる。(7通りのどれかをやろうとして失敗したのだから、脱落のワケも7通り。)

あの時別れなければ、別の人生になっていたかも

#2

When I said, “I can see me in your eyes”, You said, “I can see you in my bed”
「キミの目の中に自分が見えるよ」って言った時 キミは「あなたが私のベッドにいるのが見えるよ」って

That’s not just friendship, that’s romance, too. You like music we can dance to.
それは友情だけじゃなくて、恋愛だった キミはまるで、ダンスできるような音楽みたい

Sit me down, shut me up. I’ll calm down and I’ll get along with you.
座らせて、黙らせてくれたら 落ち着いて、キミともうまくやれるよ

  • 過去の経験を思い出す。あの娘とベッドの上で見つめ合っているシーン。
    • 女の子の部屋でベッドの上で時間を過ごした。
    • 自分の姿が相手の目の中に映るくらいの距離なので、単なる友人の距離感ではない。
  • おそらく正式な・長期的な関係にならず、曖昧に友達関係と恋愛関係の中間のような関係の女の子だったのでしょう。
    • 例えば、あのときのあの娘との関係もまた、人生における決断だったのかも。
  • あの女の子とも、落ち着いて話し合えば、上手くいったのかもしれない。
    • 最後は喧嘩別れしたのかもしれません。

Everybody plays the game – ゲームにおける成功と失敗

#3

There is a time when we all fail. Some people take it pretty well.
失敗するときもある 上手くさばける人もいる

Some take it all out on themselves. Some, they just take it out on friends
自分自身を責める人も 友達のせいにして八つ当たりする人も

Oh, everybody plays the game. And if you don’t, you’re called insane.
みんなゲームをやっているみたい やらなかったら、頭がおかしいって言われるよ

  • 失敗したときに、上手くリカバリーする人もいれば、自分を責める人もいるし、他人のせいにする人もいる。
  • 世の中の一般的な「成功」を求めて躍起になる様は、さながらゲームのよう。
    • 大学に入り、いい会社に勤めて、富や名声を得ようとするのはクエストをこなすゲームみたいです。
    • もしそのゲームに乗っからなかったとしたら、社会不適合者とみなされてしまいます。
    • しかし、例えば、#1で言及された「学校を中退すること」は本当の意味で、失敗(fail)ではないはずです。

You were born in 1984. – 監視社会と反ユートピア

#4

Don’t, don’t, don’t, don’t, it’s not safe no more. I’ve got to see you one more time
ダメ、もう安全じゃないよ キミにもう一回会わなくちゃ

That’s when you were born in 1984
それはキミが生まれた1984年

  • 歳を重ねるにつれて、社会に参加することが求められます。語り手から見た世の中は、危険な場所に見えます。
    • ここでもう一度会いたいと思っている「キミ」は、特定の誰かかもしれないし、社会や一般常識に振る舞いを強制されなかった頃の自分かもしれません。
  • 「1984に生まれる」とは「社会によって生き方が強制される場所に生きる」という意味。
    • 1984とは、1949年に刊行したイギリスの作家ジョージ・オーウェルのディストピアSF小説。
    • 全体主義国家によって分割統治された近未来世界の恐怖を描いている。
    • 村上春樹の1Q84の元ネタ。

Girls play mental games. – 恋愛関係のゲーム

#5

Everybody was well dressed. And everybody was a mess
みんなきちんとした服を着て それでいて、みんなぐちゃぐちゃだった

Six things without fail you must do. So that your woman loves just you
失敗できない6つのこと 彼女に好きでいてもらうために

Oh, all the girls played mental games. And all the guys were dressed the same
女の子は頭の中でゲームをしている 男はみんなおんなじ格好をしてた

  • 男たちはスーツを着てきちんとした仕事をしていても、中身は疲弊していたりするもの。しかし、自分の恋人や妻との関係は仕事と関係なく、大事にしなければいけません。
    • ここでいう mess は、服装のことではなく内面のことだと想像しました。
    • 週末のデートや、彼女の家族との関係を保つこと、あるいは子供の面倒をみることなど、失敗できない場面はまだまだ続きます。
  • 女性たちは、男たちを計算高く眺めているのに見えるのかも。男たちはみんな同じにみえます。
    • 女性たちも、理想のカップル・夫婦像を追い求めるゲームをしています。しかし、「理想像」も上記の「成功」と同じように社会によって規範されるものです。

Why not try it all? – 前向きなエンディング

#6

Why not try it all, If you only remember it once?
全部やってみなよ 一度思い出したなら

  • 社会に適合してみよう。というのがJulianの結論のようです。
    • 心のどこかで、やっぱり社会に適合していかなければいけないことがわかっている。
    • 社会がつまらない大人で満ちているように見えるのは、まさにヤングアダルトな年齢の特徴だと思います。

精読してみた – 解釈の根拠 & 1Point 英語講座!

英語的な表現や文法事項のうち、面白いポイントを紹介します。

Either you’re noticed or left out – AかBかどちらか

#1 – 4行目

Seven ways to go through school, Either you’re noticed or left out
7通りの学校の卒業のしかた 気づいているか、見過ごしているか

  • either A or B = AかBのどちらか。
    • 学校の卒業のしかたに気づいているか、それとも見過ごしているか。

I’ve got to – I have to

#4 – 2, 3行目

I’ve got to see you one more time, That’s when you were born in 1984
キミにもう一回会わなくちゃ それはキミが生まれた1984年

  • I’ve got to = I have to. しなければならない。
    • I have got は have + 過去分詞だから…と細かく考えるのはやめましょう。
    • もう一度きみに会わないといけない。の意味。

おわりに

感想

demoの方が少し考えさせられる曲になっている気がします。ヤングアダルトな1stから少し大人になったJulianを感じられるのが良かった。

You Only Live Onceの解説記事はこちら

ちなみに、Somewhere というソフィア・コッポラ監督のオシャレ映画にも使われています。こちらも必見です。(0:40あたりから)

参考

  • Oxford Dictionary of English
  • ウィズダム英和辞書

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA