精密和訳 Riot Van (demo) – Arctic Monkeys

前回に続き、今回はリリース前のデモ版の曲の歌詞解説をやります。(スタジオアルバム版の解説はこちら)演奏や録音はスタジオ版の方が洗練されているのですが、デモ版の方でもそのエッセンスを感じることができます。歌詞はさらに過激な内容になっていますが、よりイギリスのリアルを感じることができます。

どんな曲?

イギリスのバンド Arctic Monkeys のデモ曲。Beneath the Boardwalk というデモアルバムの中の1曲。

スタジオバージョンは同じタイトルで、1stアルバム “Whatever People Say I Am, That’s What I’m Not” の7曲目に収録されています。

内容サマリ – こんな内容が歌われてます

イギリスの治安の良くない街の夜。悪ガキ集団の話。その中の一人の下っ端ヤンキーに焦点が当てられています。

  • 夜の街で悪さをして、警察のバンに連行される
  • 他の仲間は、マリファナを吸ったり、盗みを働いたり。
  • 下っ端ヤンキーが壊れかけの車を盗んでくるが、事故
  • そして…

曲はこちら – 聴きながら和訳を読もう

和訳してみた – 日本語訳はこちら

Riot Van – Arctic Monkeys
Demo ver.

#1

We got thrown in a riot van1
バンに放り込まれて

And the coppers2 kicked him in
バンに蹴り入れられて

And there was no way he could win
勝ち目なんてない

Just had to take it on the chin3
下あごに一発パンチを喰らうだけ

注釈 I.

  1. [名] riot van: 暴動を抑えるための警察車両.
  2. [名] copper: (俗) サツ,おまわり.
  3. [名] chin: 下あご.

#2

Smoked a bong1 last night
昨日の夜、マリファナを吸って

And stole somebody’s telephone
誰かの携帯を盗んだ

He thinks it’s all alright
悪いことだと思ってないみたいだけど

But they’ve left him on his own2, on his own
そいつを置いていった

注釈 II.

  1. [名] bong: マリファナのひと吸い.
  2. [句] on one’s own: ひとりきり.

#3

But baby stop calling
電話してくるなよ

Over and over yeah
何度も何度もさ

And give me some funny cigarettes1
マリファナたばこをくれよ

And do what they told you, yeah
そして言われたことだけやれよ

注釈 III.

  1. [名] funny cigarettes: マリファナたばこ.

#4

Pinched1 a car with one headlight
片方のヘッドライトが壊れている車を盗んだ

And lost control, the passengers were screaming
制御できなくなって、乗っているやつらが叫ぶ

Made him shut his eyes real tight
目をぎゅっとつむって

And think of you, and hope that he was dreaming
キミのこと考えながら、「ああ、夢だったらな」

注釈 IV.

  1. [動] pinch: 盗む.

#5

Then up rolled1 the riot van
機動隊のバンがやっと到着

And called the fire brigade2
そして消防隊を呼んだ

But it was already too late
でももう遅すぎた

And there was no arrests3 to make
そこには捕まえる人はいない

Ohhhhh!
あらあら

注釈 V.

  1. [動] roll up: to arrive at a particular place or event, usually late = 遅れながら到着する.
  2. [名] fire brigade: 消防隊.
  3. [名] arrest: 逮捕,逮捕者.

#6

But baby stop calling
電話してくるなよ

Over and over yeah
何度も何度もさ

And give me some funny cigarettes1
マリファナたばこをくれよ

And do what they told you, yeah
そして言われたことだけやれよ

注釈 VI.

  1. [名] funny cigarettes: マリファナたばこ.

解釈してみた – 結局どういうこと?

2006年にリリースのスタジオアルバム Whatever People Say I Am, That’s What I’m Not は、アルバムを通して治安の悪い夜の街のシーンが多く描かれています。このころ彼らは、シェフィールド北部のNeepsend という街のリハーサルスタジオに出入りしていたらしい。そこで怖い人たちをたくさん見てきたとインタビューで語っています。[1]

Demoバージョンの歌詞は、スタジオアルバムより過激です。最後には死人がでてしまいました。

  • 夜の街で悪さをして、警察のバンに連行される
  • 他の仲間は、マリファナを吸ったり、盗みを働いたり。
  • 下っ端ヤンキーが壊れかけの車を盗んでくるが、事故
  • 結果、皆亡くなってしまった

We got thrown – 話し手は悪ガキの一味?

#1 – 1行目

We got thrown in a riot van
バンに放り込まれて

  • 一人称視点で語られています。話し手は悪ガキ中の1人でした。(主語 he と言っているようにも聞こえる…自信なし)
  • 警察に捕まってしまうところから曲が始まります。

悪ガキたちに置いていかれる悪ガキ

#2

Smoked a bong last night and stole somebody’s telephone
昨日の夜、マリファナを吸って 誰かの携帯を盗んだ

He thinks it’s all alright but they’ve left him on his own, on his own
悪いことだと思ってないみたいだけど そいつを置いていった

  • 置いていかれたのは、悪すぎるからなのか、バカすぎるからなのか。
    • マリファナを吸ったり、人の電話を盗むことを悪いと思っていない模様。
  • 最初の一文は主語が省略されていますが、後段で he thinks… と続くことから、主語は they の中の一人。

下っ端のヤンキーだった

#3

But baby stop calling over and over yeah
電話してくるなよ 何度も何度もさ

And give me some funny cigarettes, And do what they told you, yeah
マリファナたばこをくれよ そして言われたことだけやれよ

  • おそらく置いていかれたのは、下っ端的存在の彼だったのでしょう。
    • 置いていかれた彼は、何度も電話をかけるものの、マリファナをもってこいだの、言われたことをやれだのと言われてしまいました。
    • イギリスのヤンキー社会にもしっかりとヒエラルキーが存在しているんですね…

下っ端ヤンキーの末路 1 – 車を盗まされる

#4

Pinched a car with one headlight, And lost control, the passengers were screaming
片方のヘッドライトが壊れている車を盗んだ 制御できなくなって、乗っているやつらが叫ぶ

Made him shut his eyes real tight, And think of you, and hope that he was dreaming
目をぎゅっとつむって キミのこと考えながら、「ああ、夢だったらな」

  • 前段の「言われたことをやれ」は、車を盗むことでした。
    • 主語が省略されていますが、主体は置いていかれた彼でしょう。
  • 壊れかけの車に仲間を乗せて走り出すも、制御できず走馬灯が駆け巡ります。
    • 15の夜っぽい。笑

下っ端ヤンキーの末路 2 – 事故死

#5

Then up rolled the riot van, And called the fire brigade
機動隊のバンがやっと到着 そして消防隊を呼んだ

But it was already too late, And there was no arrests to make
でももう遅すぎた そこには捕まえる人はいない

  • 事故現場に警察車両が駆けつけて、消防隊を呼びます。
  • しかし、そこに逮捕するべき人はいませんでした。すでに亡くなっていたからです。
    • 歌詞が過激ですね…。

精読してみた – 解釈の根拠 & 1Point 英語講座!

英語的な表現や文法事項のうち、面白いポイントを紹介します。

Riot van rolls up. – 倒置

#5 – 1行目

Then up rolled the riot van
機動隊のバンがやっと到着

  • Then the riot van rolls up. の意味。
    • 強調のために、S+V が V+S の順になることがあります。→ “I’m tired.” “So am I.”
    • The Beatles の名曲 “Here comes the sun”も倒置ですね。普通なら、”The sun comes here.” (Hereは副詞。副詞は主語にならない。)

主語の省略について

#4

Pinched a car with one headlight, And lost control, the passengers were screaming
片方のヘッドライトが壊れている車を盗んだ 制御できなくなって、乗っているやつらが叫ぶ

Made him shut his eyes real tight, And think of you, and hope that he was dreaming
目をぎゅっとつむって キミのこと考えながら、「ああ、夢だったらな」

  • 「英語は主語を省略しない」といいますがそんなことはありません。
    • 曲中や、新聞など限られた単語数で示す必要がある場合には、ごく普通に省略されます。
    • 逆にいうと省略された主語は自明、ということです。自明でない場合は省略されません。
  • “pinched a car with one headlight” “lost control” の主語は he。
    • screamingの主語は自明ではないので、the passengers と明言してくれています。
  • “made him shut his eyes real tight”の主語は it。この状況。
  • “think of you” “hope that he was dreaming” の主語はhe。

おわりに

感想

歌詞は過激ですが、日本にもこのような状況も曲も存在している気がします。怖いですが、イギリスのリアルな空気感を感じられる曲でした。

音楽がかっこいいのがよい。歌詞が怖い。これぞイギリス。笑

スタジオバージョンの解説記事はこちら

参考

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