精密和訳 Reptilia – The Strokes
Repliliaとは、爬虫綱(いわゆる爬虫類)のこと。1990年頃、脳進化学者のポール・マクリーン博士は脳の三位一体論を提唱した。人間の脳は、爬虫類脳・哺乳類脳・人間脳の3層構造になっているという仮説で、その仮説によると爬虫類脳は反射脳とも呼ばれ、反射や生命維持などの機能を果たしているらしい。その後進化の過程で哺乳類脳を獲得して好き嫌いなどを考えるようになり、最後に人間脳を獲得し、いわるゆる論理や物事に対する良し悪しを考えるようになったそう。
目次
どんな曲?

2004年にリリースされた、アメリカのバンド The Strokes の2ndアルバム “Room on Fire” の2曲目に収録されている曲。
Room on Fine のアルバムのジャケットになっているのは、1961年にイギリスの画家ピーター・フィリップスの War/Gameという油絵です。この絵は五大湖近くの都市バッファローにある Buffalo AKG Art Museum という美術館で見ることができます。
内容サマリ – こんな内容が歌われてます
マスメディア嫌いのJulianが、メディア対応とプライベートでそれぞれ問題を抱えているという歌詞になっています。
- インタビューの仕事。自分が話したい話と、彼らが求めている話が噛み合わない
- 居心地が悪い。真面目に聞けよ、と思っている
- そんな気持ちで恋人の元へ帰ると、「怒ってる?」と言われる
- マスコミとも、恋人ともうまくいかない
曲はこちら – 聴きながら和訳を読もう
和訳してみた – 日本語訳はこちら
Reptilia – The Strokes
Room on Fire (2004)
注釈 I.
- [動] impress: 感心する,さすがだと思う.
- [名] way: 方法,手段.
- [動] insist: 主張する
注釈 II.
- [動] ran someone off the road: to drive in a way that forces someone else’s car to drive off the road = (運転中に) 誰かの車を道の外においやる
- [動] drown: 溺れ死ぬ
注釈 III.
- [句] on fire: 熱を帯びている.盛り上がっている,素晴らしい.
- [動] fix: (髪型を)直す.
注釈 IV.
- [動] ran someone off the road: to drive in a way that forces someone else’s car to drive off the road = (運転中に) 誰かの車を道の外においやる
- [動] drown: 溺れ死ぬ
解釈してみた – 結局どういうこと?
2000年代初頭の爆発的な人気のあと、バンドやJulianに対するバッシングもあったそう。バンドが政治的な曲(New York City Cops, Ize of the Worldなど)もリリースしており、それが曲解されヘイトにつながることも多かったみたい。
Julian本人も、そもそもオープンな性格ではないようでインタビューも好きではないみたいです。(ちなみにギターのNickはわりとオープンな人っぽい[1])
- 人の話を聞かず、書きたい記事のことしか興味のない、マスメディアが嫌い(爬虫類=いやなやつ)。
- 発言を切り取られ、曲解されて叩かれたりする。人の話をちゃんと聞いてくれよ。
- そんな気分で恋人と過ごしても、態度に出てしまってうまくいかない。
- けど、これからは思い通りにやる。
Reptiliaって何?
曲のタイトル
Replitia爬虫類
- 爬虫類には、嫌な奴という意味があります。Julianが苦手なマスコミに言及している解釈ができます。
- Reptile = a person regarded with loathing and contempt (= 嫌悪感があり、軽蔑している相手)。
- もうひとつの解釈は、爬虫類脳です。(こちらの解釈が海外では多いみたい)
- ポール・マクリーン博士が提唱した仮説「脳の三位一体論」によると、人間の脳は、爬虫類脳・哺乳類脳・人間脳の3層構造になっている。
- 爬虫類脳は最初に獲得した脳。反射脳とも呼ばれ、反射や生命維持などの機能を果たしている。
- その後、進化の過程で哺乳類脳を獲得し、好き嫌いなどを考えるようになった。
- 最後に人間脳を獲得し、いわるゆる論理や物事に対する良し悪しを考えるようになった。
- 嫌いなマスコミには爬虫類脳で対応しながら、恋人とは人間脳で会話したいのだが、切り替えが難しい。
部屋の中には複数の人がいた
#1 – 1, 2行目
He seemed impressed by the way you came in, “Tell us a story, I know you’re not boring”あいつはキミが入ってくる様が気に入ったみたい
「話聞かせてよ、キミおもしろい奴なんだよね」
- “Tell us a story” の中で us と言っていることから、入った部屋には複数の人がいてその中の一人が he なのでしょう。
- インタビュアーの中の男 (=he) は 話し手 (=you = おそらくJulian本人)が登場する姿を、興味を持ってみていた。それはまるで「面白い話があるのは知っているんだ、聞かせてくれ」といった様子だった。
Take this, now leave me – 金を持って帰れ
#1 – 3, 4行目
I was afraid that you would not insist “You sound so sleepy, just take this, now leave me”キミが言わないんじゃないかって心配してた
「退屈だな、これ持って出てってよ」ってね
- “Take this” ー マスメディアがインタビューのためにアーティストに渡すものはお金でしょう。
- 話し手(おそらくJulian本人)はマスメディアのインタビューが苦手です。聞き手のハードルを越えられなかったら、おそらく「もういいよ、金持って帰れよ」と言われてしまうことを心配している。
Strange – 嫌いなものは奇妙に感じる
#2 – 2行目
You’re in a strange part of our townキミはオレたちの街の、変な部分にいるよ
- “Our town”はバンドの出身であるニューヨークでしょうか。
- 記者会見は、ニューヨークの変な場所だ。
- 変だと感じるのは、苦手だからでしょう。
Run me off the road – 押し除けられたのは誰?
#2 – 2, 3行目
Our lives are changing lanes, you ran me off the road. The wait is over, I’m now taking over車線を変えて、オレを押し除けた
待ち時間は終わり、ここからはオレの番だ
- 2台の車がカーチェイスをしていて、自分の車が相手の車に道から押し出された。
- 押し出した方の車が「待ちはおわり、オレの番だ」と言っている。
- 誰が押し出した側で、誰が押し出された側なのか。2通りの解釈ができるとおもいます。
- インタビュアー vs 自分:自分に対して、記事にしたい内容を喋らせようとするインタビュアーを黙らせて、今からは自分の話したいことを話そうとしている
- 人間脳 vs 爬虫類脳:理性的に対応していた自分が、根源的な自分におしのけられた。これから爬虫類脳でインタビュアーと会話をしようとしている
Room is on Fire – 炎上
#3 – 1, 2, 3行目
Now every time that I look at myself自分自身を見つめるたび
“I thought I told you, this world is not for you”「言ったよね、世界はきみのために回ってない」
The room is on fire as she’s fixing her hair彼女が髪を整える間にも、部屋は熱を帯びる
- (おそらく)鏡をみて、自分自身に「世の中、自分の思い通りにいくものじゃない」と言い聞かせている。
- 思い通りにいかない状況があった、ということ。
- 部屋が “on fire” であるということは、口論などの対立をしている状況であると推測しました。
- On fire はいい意味でも用いられます。→ 盛り上がる、最高だ。
精読してみた – 解釈の根拠 & 1Point 英語講座!
英語的な表現や文法事項のうち、面白いポイントを紹介します。
impressed – 過去分詞は形容詞
#1 – 1行目
He seemed impressed by the way you came inあいつはキミが入ってくる様が気に入ったみたい
- He seemed impressed = 彼は感銘を受けたように見えた。
- Impressed は impress = 良い印象を与える、という動詞です。過去分詞は単なる形容詞として考えましょう。
- 例えば、He seemed impressed. と He seemed sleepy. は全く同じ分構造。
enough は形容詞の後ろ
#2 – 3行目
Yeah, the night’s not over, you’re not trying hard enough夜は終わってない、まだやれるだろ
#2 – 6行目
You’re no longer laughing, I’m not drowning fast enoughもう笑えないよな、簡単には死なない
- enoughは常に形容詞の後ろに置く。
- hard enough, fast enough.
no longer = もはや … ない
#2 – 6行目
You’re no longer laughing, I’m not drowning fast enoughもう笑えないよな、簡単には死なない
- no longer … = もはや…ない。
- さっきまで笑っていたが、今は笑っていない。
おわりに
感想
ストロークスの曲はJulianの身の回りのことが題材になっているものが多い気がします。それゆえ、文字だけを読んでも何について歌っているのかわからないこともあります。解釈はあくまで一例と受けとっていただけると幸いです。
上記以外にも、解釈の余地はかなり残されていることをご理解ください。皆様からのご意見お待ちしてます。
参考
- Buffalo AGK Art Museum – Peter Phillips – War/Game, 1961
- Macmillan Dictionary – run someone off the road
- Noisey – Maybe You Live Twice: Julian Casablancas’s New Void (2023/7/9閲覧)
- Sharpens – Reptilia by The Strokes: Lyrics Meaning and Interpretation (2023/7/9閲覧)
- Oxford Dictionary of English
- ウィズダム英和辞書