精密和訳 Dance Little Liar – Arctic Monkeys

あなたは浮気したことがありますか?付き合っている相手にバレないように小さな嘘を積み重ねているうちに、すべてが重荷に感じてしまった経験はありますか?一思いに白状して楽になりたいけど、今度でいっか…。そんなアンニュイで浮気性なあなたにはこの曲がぴったりです。

この曲は

2009年にリリースされた、イギリスのバンド Arctic Monkeys の3rdアルバム “Humbug” の8曲目に収録されている曲。

どんな内容? – 聞く前に知っておきたい前提知識

彼女がいながら、他の女の子と浮気している男の心情を描いた曲。ちょこちょこ嘘をついて浮気をごまかし続けた結果、言うも地獄、言わぬも地獄という八方塞がりな状態になってしまった。

  • 付き合ってる彼女に浮気のことがバレそうになるたびに、嘘でその場を凌いでいる
  • 正直に打ち明けて楽になりたいけど、気が重い
  • 嘘をつき続けているのも、付き合ってる彼女に対して罪の意識を感じて、辛い

曲はこちら

歌詞対訳 – 和訳

Dance Little Liar – Arctic Monkeys
Humbug (2009)

#1

I heard the truth is built to bend1
小さい嘘もあるって聞いた

A mechanism to suspend the guilt is what you will require
この罪悪感を先送りにするカラクリが要る

and still you’ve got to dance little liar
まだ嘘つかなきゃいけない

It’s just like those fibs2 to pop and fizz
まるでウソがふつふつ込み上げるみたい

And you’ll be forced to take that awful quiz
そしてあのひどいクイズをやらされる

And you’re bound to trip3
解けないクイズ

And she’ll detect the fiction on your lips4
彼女はきっと僕の唇に作り話を見つけて

And dig a contradiction5 up
矛盾を掘り起こす

And the clean coming6 will hurt
ほんとのことを話すのは心が痛むし

And you can never get it spotless7
そして潔白にもできない

When there’s dirt beneath the dirt
ホコリの下にホコリがある時には

The liar takes a lot less time8
うそをついてしまえば手短に済む

注釈 I.

  1. [動] bend the truth: to say something that is not true or that misleads people but that is usually not regarded as a serious or harmful lie = ちょっとした嘘を言う.”The truth is built to bend” で「ちょっとした嘘はついてしまうものだ」解釈とした.
  2. [名] fibs: a lie, typically an unimportant one = ちょっとした嘘.
  3. [動] trip (up): 間違いをする,失敗する.
  4. [名] lips: 唇.eyes, glasses等と同様に一対のものを数えるため複数形になる.男(you)の唇を指す.
  5. [名] contradiction: 矛盾.
  6. [名] clean coming: [動] come clean = be completely honest; keep nothing hidden = 「正直に白状する」の名詞形.
  7. [形] spotless: absolutely clean or pure; immaculate = “spot”(染み)-less = 「染みひとつない」= 潔白.
  8. [名] a lot less time: 短い時間 ≒ much less time.

#2

I’m sure it’s clear and plain to me
単純明快にきまってる

It’s not an alibi you need just yet
まだアリバイが必要な状況じゃない

Oh no, it’s something for those beads of sweat1
やばい、汗がでる話だな

Yes that will get you back to normal
よし、これで元通り

And after you have dabbed2 the patch3 you’ll grieve4
染みをぬぐったあと悲しくなる

And then proceed to scratch the varnish5 off
そしてうわべの飾りをひっかき剥がしていく

That newly added calmness so as not to raise any alarms too soon
新しく得た平穏 すぐに警告をならさないように

And the clean coming will hurt
ほんとのことを話すのは心が痛むし

And you can never get it spotless
そして潔白にもできない

When there’s dirt beneath the dirt
ホコリの間にホコリがある時には

注釈 II.

  1. [名] beads of sweat: 汗のビーズ.玉汗.
  2. [動] dab: press against (something) lightly several times with a piece of absorbent material in order to clean or dry it or to apply a substance = 何かをくっつけるため,綺麗にするため,乾燥させるために,吸水性のある素材で何かに軽く何度か押しつける.
  3. [名] patch: (周りと異なって見える)部分; (汚れ・油・湿気などの)斑点, しみ, ぶち.道路の一部凍った部分や雲間からのぞく一部分の青い空もパッチと表される.
  4. [動] grieve: feel intense sorrow = 強い悲しみを感じる.
  5. [名] varnish: ワニス.ニスのこと.比喩的に「うわべの飾り」の意.

#3

The liar takes a lot less time to decide on this saunter1
中途半端はやめる時だ

Have you got itchy2 bones3?
居心地がわるいか? 

And in all your time alone can you hack your mind being riddled4 with the wrong memories?
ひとりでいるとき、ウソの記憶で穴だらけなを気持ちと折り合いをつけられるか?

And the clean coming will hurt
ほんとのことを話すのは心が痛むし

And you can never get it spotless
そして潔白にもできない

When there’s dirt between the dirt
ホコリの下にホコリがある時には

注釈 III.

  1. [名] saunter: ゆったり歩くこと,ぶらぶらすること,散歩.ここでは,「打ち開ける決断をしないでだらだら歩いている状態」と解釈した.
  2. [形] itchy: かゆい,むずむずする,(したくて)うずうずする.”get itchy feet” = 移動したくてうずうずする.
  3. [名] bone: 骨.骨身.英語においても,比喩的に「芯」の意味での用法も見られた.”itchy bone”はどうやらAlex Turner独自の表現のよう.ここでは,「居心地がわるい」とした.
  4. [動] riddle:  make many holes in (someone or something), especially with gunshot = 主に銃で、穴ぼこにする,が動詞の1番目の意味.[名] riddle = なぞなぞのこと.#1において、彼女に浮気を疑われて、質問攻めにあう様を”awful quiz”と表現していることから,「心が穴ぼこな状態」と「なぞなぞを解かされている状態」の2つの意味にとれる.

解釈してみた – 結局どういうこと?

今の状況が良くないとわかっていつつも、結局はまたウソをついて決断を先延ばしにしてしまう…。優柔不断な男の物語。特に大きな転換や結末があるわけではなく、ただただ言おうかやめようか迷っているだけの歌です。笑 この状況や本人の気持ちにフォーカスして1曲にしてしまうというところが良いなと思いました。

  • ちょっとした嘘はみんなついている。嘘をついてごまかしてしまえば、浮気を正直に告げた時の罪悪感を先送りにできる
  • ふとした瞬間に彼女に疑われたびに、いつ嘘がばれるんじゃないかとひやひやする
  • 白状してしまうのは、彼女が傷つくだろうし、自分も罪悪感を感じる。
  • かといって嘘を塗り固めてしまった今、元の状態に戻ることもできない。結局嘘をついてごまかしてしまう
  • 今はとにかくなるべく疑われないように、取り繕うしかない
  • でも、このどっちつかずな状態はいつまで続けるのか?こんなにウソをついてしまった今、まともでいられるのか?
  • 結局はまた、嘘をついてごまかしてしまう

精読してみた – 英語を勉強しよう

もう少し詳しく、意味の切れ目での構造を見ていきます。

Dance Little Liarって何?

曲のタイトル

Dance Little Liar

楽曲のタイトルになっているこの言葉。”Dance little liar”という決まった表現はなく、作詞しているAlexの独自表現のようです。文字通りに考えるなら、「小さな嘘つきを踊れ?」

  • “Little Liar”は一般的に使われる言葉で、子供が小さなウソをついた時に呼びかける表現。”You liar”がきつい印象を与えるのに対して、”little”を付け加えることでやわらかい表現にしているそう。
  • “Dance”は比喩的な意味でのダンスで、「バタバタする」くらいの意味と思います。ちなみに、以下のような表現も存在しているようです。
    • Dance around the truth = to avoid speaking truthfully outright, or to evade the truth by lying = 明言をさける/嘘で真実を避ける
  • つまり、”Dance little liar” = “Dance liar”= “Do liar” = “lie”=「嘘をつく」が大きい意味。子供がいうような小さいウソ(little liar)をついて、足掻く(dance)というニュアンスだと思います。

#1 英語のポイント

#1-1

A mechanism to suspend the guilt is what you will require and still you’ve got to dance little liar.

  • 前半の「罪悪感を先延ばしする仕組みが必要」と後半の「you’ve got to dance little liar」が同じ「ウソをつく必要がある」の意味。
  • You’ve got to ≒ You have to ≒ You should.

#1-2

It’s just like those fibs to pop and fizz.

  • pop,fizzともに炭酸ジュースに用いられる表現。
  • #1-1でついたウソが炭酸の気泡のように表面に上がってくる=ウソがバレそう。

#1-3

And you’ll be forced to take that awful quiz and you’re bound to trip. And she’ll detect the fiction on your lips and dig a contradiction up.

  • be forced to=させられる,be bound to=する運命にある.ウソをついた部分に対して、彼女の詰問(awful quiz)が始まる。
  • 後半は、”detect”と”dig”が並列。fiction = ウソ。「彼女はウソをみつけて矛盾を指摘する」

#1-4

And the clean coming will hurt. And you can never get it spotless when there’s dirt between the dirt.

  • “come clean” を “clean-coming” として名詞になっている。”come home” を “home-coming”とする変形と同じ。
  • dirt = ホコリだが、ここではウソの意味。日本語の「叩けばホコリが出る」に似ている。

#2 英語のポイント

#2-1

It’s not an alibi you need just yet.

  • just yet = 今すぐに…しない。否定文で用いられる。ここでは「今すぐにアリバイを必要としない」=「まだウソをつくタイミングじゃない」の意味。
  • 変なタイミングでベラベラ喋り始めてたら、かえって怪しまれてしまいます。

#2-2

Oh no, it’s something for those beads of sweat.

  • “something”は、訳さないsomethingとしました。
    • “I have something for you” =「いいものあげる」、”That’s something” =「それは大変だ」「それはすごい」。
  • 「玉汗がでるほどの(意味のある)何か」=「それを指摘されたらまずい」と解釈した。

#2-3

Yes that will get you back to normal.

  • “that”に具体的な意味は受け手はわからない。
  • 「thatが自分を普通に戻してくれる」=「彼女からの詰問をのがれられそうな状況が訪れた」という意味。

#2-4

And after you have dabbed the patch, you’ll grieve and then proceed to scratch the varnish off, that newly added calmness, so as not to raise any alarms too soon.

  • 浮いてそうに見える”that newly added calmness” =「(ウソとひきかえに)新しく手にした平穏」は名詞句の挿入としました。(自信なし)
  • so as (not) to = in order (not) to: …する(しない)ために。
  • ウソの後処理をして悲しくなりながらも、またすぐ疑われないようにしないと、と思っている。

#3 英語のポイント

#3-1

The liar takes a lot less… Time to decide on this saunter.

  • “The liar takes a lot less time.” = 「ウソをついてしまえば手短済む」といいかけて、”It is time to decide on this saunter” = 「そろそろ決めるか」と言い直したと解釈しました。
  • 歌い方が、そこで途切れているように聞こえる。

#3-2

And the clean coming will hurt. And you can never get it spotless when there’s dirt between the dirt.

  • #2での “dirt beneath the dirt” から、”between”に。
  • 「ホコリの上にホコリがある」が、「ホコリとホコリの間にホコリがある」へ。よりウソで塗り固めた状態になっている、という比喩。

感想

こんなカッコいい曲調で、こんな歌詞を歌っていたなんて。果たして本人の経験談なのでしょうか。ちょっと陰鬱な歌詞は、曲にもマッチしておりHumbugをリリースした当時のAlexの雰囲気にも合っている気がしました。

改めて曲を聴いてみると、歌い方に抑揚が少なく感じます。特に、次の9曲目のPretty Visitorsはもっと声にハリがある気が…。内容に合わせて陰鬱な楽曲にしたかったのでしょうか。

参考

  • Oxford Dictionary of English
  • ウィズダム英和辞書
  • Merriam-webster(bend the truth
  • Urban Dictionary (Little liar)

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